えくぼと鹿と魚の子

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<<   作成日時 : 2011/01/19 21:33   >>

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【遠い銀河系の果てから太陽系の片隅に辿り着いたギラーユ星人の超大型宇宙船 
その内部での会話】


「総統!ヨウラーク総統! お喜びください。
ようやく発見した我々の新天地の惑星、地球にもう間も無くで着きます!」

「おう、リンヤーマ長官。その知らせを今か今かと待ちわびてたぜ。
まったく、年取っちまうよ。頭も禿げ上がっちまうってんだ」

「いやいや、お待たせしました。
でもヨウラーク総統、我々ギラーユ星人にもともと頭髪はありませんよ」

「わかってる、わかってるって。ちょっとしたジョークじゃねえかい」

「はっ。いつもながら冴えますなあ。総統のお笑いセンスは」

「だろ? ゆうべだって、船内バーのアケミママにウケちゃってウケちゃって」

「総統・・・また行ってらっしゃったんですか。もうお酒はほどほどにしてくださいって申し上げてるのに・・・」

「わかってる、わかってるって。あ、うちのカミさんには・・・アレだぞ。言うなよ。たのむよ長官・・・」

「わかってますって。・・・で、ヨウラーク総統、肝心の地球の方ですが」

「おお、それだそれだ。なんでも学者たちの予測では、水もあって大気もある、気温も我々が暮らしていくのにピッタリと合った星だという報告じゃねえか。間違いねえんだろうな」

「はい。遠くから観測した限りですが、ほぼ間違いないとの報告を受けております」

「そうかそうか。
だが長官、そんな環境の星なら、先住の生物もいるんじゃねえのか?」

「はい、学者たちもそれは申しておりました。若干の大気の汚れも観測されておりますし・・・知的生命体のいる可能性は高いかと・・・」

「うむ、そうか。へっ、上等じゃねえか! リンヤーマ長官、ただちに総攻撃の準備に入れ!地球人など我々の軍事力でもって皆殺しでえ!」

「総統、落ち着いて。また血圧上がりますから・・・」

「ばっかやろう!落ち着いていられるかってんだ。
故郷のギラーユ星を失った我々が、この広い宇宙をさまよい続けてもう幾星霜・・・長かった・・・やっとしっかりと大地を踏みしめる暮らしができる日が来たんだよ・・・ううっ・・民衆たちにもつらい思いをさせた・・・」

「はっ、そうでございますね・・・。総統もご心労が続く毎日でございました。
そのせいか、また・・・お太りになられたような・・・そのお腹・・・」

「うん。わしはストレスが多いと太っちまう。また船医に怒られちゃった」

「あ〜あ。もうお腹に隠れて脚が見えないですよ。しっぽまで背中にめり込んじゃって・・・」

「うるさい! それより長官、ほかに報告することはないのか!」

「あ、はいはい、ございます。
その地球人のことですが、やはり総攻撃をかける前に奴らの生態の事前調査が必要だと思いまして、昨日から調査員を一人高速艇で地球に派遣しております。
もうまもなく報告が入るかと思われます」

「おっ、そうかそうか。流石だねえ長官。で、誰を派遣したんだい?」

「は、モトサーカ偵察兵でありますが」

「え〜、あいつかよ。大丈夫かい?あの怠け者で・・・」

「ええ、ヤツにはこれが最後のチャンスだと言い聞かせておきましたんで大丈夫でしょう。ま、さすがにヤツも銃殺にはされたくないでしょうから」

「・・・あいつよー、このあいだアケミママにこっそりネックレスをプレゼントしてたんだぜ。・・・ったく。それだけでもう銃殺もんなんだけどよ」

「総統・・・私情を挟むのは・・・」

「わあってる。わかってるって」


「あっ! 総統!今、地球のモトサーカから通信が送られてきたようです!
大型モニターに切り替えます!」

『リンヤーマ長官!地球のモトサーカです!聞こえますか?!』

「おお、モトサーカ君。ちゃんとモニターにも映ってるよ。ここにヨウラーク総統もいらっしゃるので地球の状況を報告したまえ」

『はっ!・・・そ、それが、大変です!わ、私、地球人に見つかってしまいました!』

「なんだって!! モトサーカ!そりゃ本当か!」

『ああっ!ヨウラーク総統!ひえええ!も、申しわけございません!』

「てめええ、やっぱりしくじりやがったな! 今すぐ銃殺でえ!そこになおれ!」

「そ、総統、落ち着いてください。これはモニターです。銃をしまって・・・血圧も上がります」

『すいませんすいません!! もうアケミママにはちょっかい出しませんから・・・』

「モトサーカ君も落ち着きたまえ! ちゃんとどういう状況か説明するんだ!」

『あっ、は、はい。すいません。
ええと、私が降りた場所は地球の中では比較的小さな陸地なんですが・・・かなり大勢の生命体がひしめき合って生存しています・・・それに大きな建造物も林立してますし、高速で移動する乗り物も非常に多くて混雑しております。騒々しいですし大気も汚れています』

「なんと。そんなに多くの生命体が・・・しかもある程度の文明はあるようだな」

『はい長官。この生命体・・・地球人なんですが、ヤツらは我々の倍くらいはある長身でして、しかも手足が異常に長いんです。ちょっと気持ちが悪いんですよね。脚が絡まって歩きにくいんじゃないかと思っちゃうぐらいで』

「そんな感想なんかどうだっていいんだよ!! モトサーカ!地球人に見つかったことを説明しやがれ!」

『は、はい!総統! えー、調べによりますと私が降りた場所は“トウキョウ”と呼ばれている所らしいんですが、私が調査中にですね、ちょっとションベン・・・いや、小用をもよおしまして・・・で、川辺の草むらへ行って用を足しておりますと・・・』

「長官・・・やっぱりこいつは銃殺だ・・・」

「御意に・・・しかしここはひとつヤツが帰還するまでご辛抱を・・・」

『・・・とつぜん一人の地球人が目の前に現れたんです。こいつが他の地球人とは一風変わったヤツでしてね・・・なんかヒラヒラした派手な服を着ておりまして、妙な飾り物も頭に乗ってるし、それに驚いたことに銃らしきものを手に握っていたんです』

「なに! 銃だと」

『はい。そしてそいつは私を見るなり笑顔になって、何かを喋りながら駆け寄ってきたんです』

「笑顔だと!? そいつは我々異星人を見たのに驚くよりも笑ったってえのか!」

『はい、もちろん地球人の感情表現は我々とは異なるものかもしれませんが、私には何か楽しそうに見えました。で、笑いながら私をつかまえようとしたんです』

「むうー、銃を持っている・・・突然つかまえようとする・・・なんて好戦的な」

『で、私はあわてて瞬間移動装置を働かせまして、ヤツの手をすり抜け、なんとか難を逃れました。それからあとで、自動環境記録装置にヤツの喋っていた言葉が残っていることに気付き、その部分を音声翻訳機にかけてみたんです』

「おお!本当か。ヤツは何て言ってやがったんだ?!」

『はい、これです。お聞きください』『─アー、ムーミンダ!オイデー!─』

「む、むーみん?おいで?・・・何でえ、そりゃ?
“おいで”はこっちへ来い、ということだろう。
だが“むーみん”とは何なんだよ。・・・モトサーカ!調べてねえのか?」

『はっ、はあ、少し調べてみたんですが、どうも固有名詞のようで・・・生物の名称の様な感じかと思われるんですが・・・分かりません』

「うむ〜。・・・リンヤーマ長官。おまえさんはどう思う?」

「・・・はい総統。これは非常に憂慮されるべき発言かと・・・。
もしですよ、地球人の資質が全てこのように好戦的で、常に武器を持ち歩いているようであったら・・・そしてもし、この“むーみん”の意味するところが、異星からの侵略者、であったなら・・・モトサーカを発見した地球人の発言は実に挑発的な・・・」

「うむむむ・・・。おい! モトサーカ!!」

『はい、総統!』

「ただちにその地球人を抹殺するんだ! まだ間に合うかもしれない。ほかの地球人に知られる前に手を打て!そいつを探すんだ!」

『はい。ご安心ください総統。すでにヤツには超小型偵察ロボットを張り付かせています。今から監視映像を受信してみます。
そして私は発信電波を辿ってヤツのところに向かいますんで』

「おっ、なんだやるじゃねえか、コイツ。じゃ早いとここっちにも見せてくれ」

『はい。回線を繋げます。ヤツの映像です。どうぞ』

「ほう・・・こいつかい・・・長官、どう思う?」

「そうですね、モトサーカが言うほど派手な格好はしていませんね。しかし目付きは確かに好戦的かと・・・」

「こいつぁ自分の住処に帰ってきてるようだな。
床に寝転がって・・・何かを食ってるな。野蛮だねえ・・・ん?へんな通信装置の様なものをイジッってねえか?こいつは」

「あ、確かにそうですね総統。と、いうことは・・・」

「いかん! こいつはすでに我々に関する情報を・・・おい!モトサーカ! ヤツの通信装置の画面を大きく映し出すようにロボットに指示しろ!」

『通信装置? はあ、分かりました。
・・・あっ!!』

「なんでえ!どうした!」

『やられた!! あれは地球人が“パソコン”とか呼んでいる通信装置です!
地球には、奴らが“ウェブ”だとか“ネット”だとか呼んでいる通信網が地上のほとんどに張り巡らされているんです!
その装置で、全ての地球人は同時刻に同じ情報を共有しているらしいのです!』

「なんだってえ!そんな文明が!」

『し、しかも今ヤツが捜査している“パソコン”の画面に映っているのは!!
こ、こ、これですー!!』

(これ)

「あっっっ!! モ、モトサーカじゃねえか!
シンプルな線で描かれちゃいるが、実に的確にモトサーカが描かれている!実物のようだ!」

『よ、横に書き添えられている言語を翻訳してみました・・・これです。“ワタシガエガイタムーミン”・・・』

「なんてことだ。
遅かった・・・ここにも出てきましたね総統・・・“むーみん”です・・・」

「ああ、長官・・・もはや“むーみん”の意味は明らかに・・・」

「そうですね総統。そして、我々侵略者の存在は、今、この瞬間に地球全土に知れ渡ったと考えた方が賢明かと・・・」

「長官・・・ひとつ正直に答えちゃくれねえか。
あの、凶暴そうな地球人ども全員が、あの好戦的な態度で武器を持って我々を迎え撃ちにきたら・・・どうだろう・・・我々に勝てる見込みは・・・」

「・・・。はい。ヨウラーク総統。
・・・文明は確かに我々の方が高度ですが・・・我々は元々はのどかな民族ではないですか・・・平和を愛する・・・」

「そのとおりだ、リンヤーマ君。我々は野蛮人じゃねえ。ヤツらの様に。
それに争いは争いを生むだけだよ。
宇宙はまだまだ広い。急いては事を仕損じるってえもんだ。まだ先はある・・・」

「ははーっ。ヨウラーク総統。・・・どこまでも、お供いたします・・・」

「ありがとうよ」

「・・・。
・・・ときに、ヤツはどういたしましょう、モトサーカ・・・」

「・・・いいんじゃねえ? もう、地球に捨てといて」






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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
そっ そういうことだったのか ・・・
多部さんは地球を救った! これで二回目だ!
しかし哀れな宇宙人モトサーカ ・・・ 

直ぐに多部さんに連絡を取って彼を探さなきゃ
保護してフィンランドに送ってやろう ・・・ 

えっ 多部さん家で飼われたい?
それはダメ! モトサーカと多部さんが一つ屋根の下で暮らすなんて絶対反対!!

おいっ 連れて帰れよっ! 危険だよ(笑



rakuyou
2011/01/20 00:47
>おいっ 連れて帰れよっ! 危険だよ

いやあ、彼はあっぽ君と仲良くやっていけると思いますよ(笑

読んでいただいた上に、いろんな事に目をつぶっていただいてありがとうございます、師匠(笑

サカモト
2011/01/20 01:49
「えっ ヨウラーク総統 捨てておくのですか。それはまずいです。モトサーカは手が早いので、万が一ヒラヒラした服の地球人にちょっかいでも出して、子供でも出来たら、われわれのことがすべてお見通しになってしまいます」

「そうか じゃあリンヤーマくん どうしたらいいと言うのだ」

「はい 私にいいアイディアが・・・、モトサーカはすでにわれわれと言葉が通じるあっぽ君とやらと仲良くなっているようなので、至急私が連れ戻しに行きたいと思います」

「なに わしをひとりにしておぬしが行くというのか。なんか危ないなぁ・・・」

「えっ 何がですか・・・ すぐに連れ戻してきますから安心してお待ちをハイ! ヨウラーク総督」 
yamarine
2011/01/21 01:24
「ちょっと待ちな! リンヤーマ長官!」

「はっ? なんでございましょうヨウラーク総統」

「おぬし、地球へ行くことの本心を言ってみちゃどうだい?」

「本心?と、言われましても・・・モトサーカは大事な部下でございます。やはり地球に捨て置くことはできません・・・」

「へっ! たわけたことを。わしの目はごまかせねえ! その一張羅のスーツはなんだ!手に持ってるカメラはなんだ!なんでそんな花束を抱えてるんだ!銘菓“宇宙ういろう”まで持って!」

「げっ! バレました?」

「たのむ!・・・わしも連れてって!」
サカモト
2011/01/21 03:01

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